オレンヂなデイズ

イタリア帰りの起業家、奮闘する

辺境の異国での話。

2006年の春のこと、人生初めて飛び込んだ外資企業は、ノルウェイOperaと言う会社で、組み込み機器(パソコン以外でインタラクティブ機能を持つ高度な電子機器)のメーカーに移植性の高いブラウザーのライセンスを販売する営業でした。

 

外資とはどんなところか、英語ネイティブでない人間が外資で営業をするとはどう言う事か、スタートアップ企業とは何か、本でしか読んだことない「ハーバードMBA」のCFOとの会議で垣間見えたキャリアエリートの実力、などなど。。。全部そこで教わることが出来ました。値千金の、すごく貴重な経験だった。

 

他にも、書いていくときりがないけど、バグの再現方法をレポートしたり、ガウス分布を用いてStatement of workソフトウェア開発にかかる予測時間を算出したり、CRMを使って新規開拓のパイプラインを管理して進捗を報告したり、Web技術の基礎とか、ノルウェイ人の弁護士と契約書をやりとりしたり、おおよそ全てが現在に至るまで生きているビジネスの基礎で、たいへんありがたいことでした。

 

初めての海外出張は天国のように美しい夏のノルウェイオスロ、英語もまだまだたどたどしい状況で、よく地球の裏側まで飛んで行ったもんだな。そんな僕にスカンジナビアの人たちは皆優しくしてくれて感動したものです。深夜12時まで明るいし、フィヨルドにボートを出して釣りに連れて行ってくれたりもした、本当に優しい人達だった。。技術者の聖地こと、スウェーデンの「Linkoping / リンショーピン」では、超賢いエンジニアと仕事する経験も得ることができた。

 

リンショーピン大学は、コンピューターサイエンスの分野では北欧でもっともアツイ大学だったらしく、その学生を採用するために田舎町にも関わらずエリクソンモトローラなど、錚々たる企業がオフィスを構えていた。大学生が即戦力たる実力を持っているということ自体、世界について無知な当時の僕には想像すらできないことで印象的だった。

 

一方で、その後の職場環境と比較すると、相当に経営陣への評価が低かったなと思う。あまり過去の雇用主をdisるもんじゃないとは分かりつつ、現地の上場企業だったし、一般投資家からお金を預かる身なのでボードメンバーは人から評価されることは避けられない。最近よく思い出すけど、本当にビジョンも戦略もあったもんじゃなかった。地元の縁故的な要素で固められたボードメンバーの弊害も経験したし、かと思うと突然IBMからやってきた根暗そうな取締役が社内を改革しようとして他の幹部とすんげー衝突を産み、一瞬で解雇されるというそこそこに企業ドラマみたいな事件もあった。

 

その後、株主との衝突を幾度かくりかえした創業社長は結局会社を追われることになったけれど、時は流れて、また新しくブラウザを開発しているらしい。「ブラウザーはユーザー1人につき1年間に1ドルを検索エンジン事業者から得ることが出来る。」とか、「大きなシェアを持っているブラウザーは柔軟性に欠ける。そこに不満を持っている層を捕まえる」とか…記事からは全くもって新規性のあるアイデアがあるようには伝わってこないけれども、果たして隠しているのか相変わらずアイデアが 無いのかは窺い知れない。せっかく記事にして貰うんだから、何かInnovativeなアイデアをアピールすれば良いのにとは思うけどね。個人的にはとても複雑な気持ちになる記事だ。

 

どう考えても、もうデスクトップ向けのブラウザーを自社で開発して儲けられるような時代じゃないと思うんだけど、もちろんインターネット人口は莫大な訳で何が当たるかは分からない。

 

Opera創業者、"ヨン テシュナー"の記事を見て、悲喜こもごも、こんなに色々な思いが去来するとは自分でも意外だった。やっぱり自分のルーツだからだねぇ。。よかった点としては、聖人みたいなCEOだった。「誰もがWebにはアクセスできるべき」との哲学にもとづいて、障害のある人でもマウスジェスチャーや音声読み上げなどの機能により、操作しやすいブラウザを設計して実装した話を情熱的に語ってくれたりした。

 

それはビジネスのビジョンではなかったけれども、とても感動する話だったのを覚えている。