オレンヂなデイズ

イタリア帰りの起業家、奮闘する

Skypeで働いて勉強した事を忘れないうちにまとめる。前編

東日本大震災の日、俺はSkypeの全社会議でアムステルダムにいたんや。

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ちょうど帰る日が3/12とかで、震災で成田空港が閉鎖されてしまい、日本に直接飛べないからスカイプジャパンの仲間(4人くらい)でソウルかどっかにとりあえず飛んで様子を見ようみたいな話になっててんやわんやで大変だった。

 

さてさて、今日のトピックや!

キャリアと言う視点で見ると、2010年にスカイプのアカウントマネージャ(営業主任くらいのイメージ)に受かった事は今居る地点に到達する上で非常に大きな分岐点やったなぁって思う。まだ別に大した事出来ていないけどそれでも一応。

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実際に当時のSkypeは日本でもKDDIと年間10億円規模の契約を締結し(いわゆる「Skype au事件」)飛ぶ鳥を落とす勢いやったし、競争倍率はなかなかで、最終結果の通知は予定日よりも十日くらい遅延したんや。大穴と言われていた俺が受かったことが分かった時、担当してくれた凄腕エージェントのラファエル・バビコフが熾烈なコンペティションを制してこのポジションを掴んだ事をとても喜んで、祝ってくれた事をよく覚えている。あの時はホンマに、めちゃ嬉しかった。

 

コンペティションと言われると燃える俺は、そう言うのには向いてるとつくづく思った。

 

急いで当時勤めていた財閥商社系SI会社に辞表を出して、そこで仲良くなった豊洲の親友と戦友に別れを告げ、夢と希望に溢れた着任は2011年の1月からだったと思う。

 

忘れないうちにあの頃、栄光の日々を謳歌していたルクセンブルクが誇る会社、Skypeの中で学んだ事をまとめておきたいんや。

 

1. やっぱりファンド最強!

当時、スカイプはプライベート・イクイティのシルバーレイクってファンドが筆頭株主だった。最終的にはシルバーレイクはeBayからスカイプを結構安く買って、マイクロソフトに75億ドルと言う凄まじい高額で売りつけてすげー儲けたと言う話だった。

本当はアムステルダムの全社会議では、Skype株式上場に向けて社長のトニー・ベイツの元みんなで上場して頑張ろうぜみたいなテンションで怪気炎をあげていたはずだったのに、裏では買収される事は決まっていたらしい。。

 

すごく鮮烈に覚えとるのは、そのアムスの会議でトニーベイツCEOへの質問コーナーで一人の社員が、「株式上場したらファックな大企業が買収しようとしてくるだろうけどそれってどうやって避けるの?」って質問していたんや。その時、トニー・ベイツはさらっと答えた。「俺たちが企業価値をあげて、時価総額を極大化してファッキン大企業が買えないくらいになろうぜ!」・・勿論彼はその演技をすることが仕事だった訳だから誰も責められないが、CEOってのもやれやれな仕事やなぁと思った。

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買収を避ける方法なんて、普通は存在しないって皆たぶん分かってた。唯一聞いたことがあるのは、Googleの株式は株式市場で買っても議決権がついてる株は買えないみたいな話を聞いたことがある。MSとかに買収される事を避けるために議決権付きの株式はラリー・ペイジなどの経営チームが握っているんだそうだ。議決権なしでも株式が売れるくらいすごい会社は稀だろう。

 

話が外れたけどそんな訳で、ベイツはシルバーレイクから送り込まれたCEOだ。あとCTO(技術担当取締役)のマーク・ジレットって言う人も同じくファンドが送り込んだ人材なんだけど、ジレット氏はすこぶる評判が悪かった。「コードを1行も書けないのにCTOだなんて笑える」みたいな人物評を周囲の人々は言っていたけど、実際のところは俺は知らへん。ただ、スカイプスマホが台頭する世界でスマホ向けに最適化するのが遅くて、その隙をViberやKakao、LINEに突かれたのは間違いない。そもそもパソコン発祥の構造だったからだ。

 

Skypeで働く900人ほぼ全員の前で「上場するぜ!」と言うポーズを取っておきながら、実は全力で買収される事を目指すシルバーレイクから送り込まれた幹部たち。なんとも社員としては切ない訳だけど、それが資本主義の世界の現実なのだからわかりやすい形で「資本のルール」を教えてくれたことに感謝する方が生産的やろうなって思う。

 

2. 技術トレンドの移り変わりは早い!

何を当たり前の事をと思う人もおるかもしらんけど、身を以て体感すると本当に想像を絶するんや。。Skype当時は革命的だったパソコン通話を可能たらしめた技術は、Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)と呼ばれる。Skypeを創業したニクラスと言うスウェーデン人率いるチームは、このPeer to Peer (以下、P2P)技術を活用して以前から"Kazah"と呼ばれるファイル共有ソフトを世に出していたんだけど、これはご存知の通り世界中ですごくたくさんの著作権侵害関連の訴訟を抱える原因となって結構大変だったらしい。日本だと同様の仕組みを持つWinMXとかが俺が大学の時は流行っておったね。

 

なんとかP2P技術をもっと平和利用できないかと考えたニクラスとその仲間のヤヌスと言う人は、エストニアの「ケルベロス」と言う名前の場末のうらぶれた伝説のバーで話していて、P2Pで電話みたいに遠くに人と話せるアプリケーションを作れるんじゃねーかと言う話になったらしい。全てはそこから始まって、のちに世界を震撼させるSkypeが誕生するんや。

 

そもそもインターネットの基礎となるTCP/IP通信はアメリカの国防相で開発された技術だし、マイクロソフトインテルGoogleOracleApple、、とITは全部アメリカの企業やから、ヨーロッパ初のソフトウェア企業が世界を変えるような技術を開発すると言うのはとても貴重なケースだなって思う。Linuxで有名なリーナスとかはスウェーデン人だったりするけどね。

 

サーバーを利用せずとも、パソコンだけで音声・映像通信を可能にするスカイプの革新的なP2Pネットワークは、「スーパーノード」などの超クールな要素技術とあいまって業界に衝撃を与え、国際電話で莫大な利益を得ていた当時のいろんな国の電話会社を震え上がらせた。

 

今でこそ、国際遠距離恋愛のカップルもビデオコールを無料で出来て当たり前だけども、それを初めて可能にしたのはSkypeな訳だから人類史上稀に見る本当に革命的なソフトウェアだったと言える訳やね。

 

しかし、時は流れて10年後、スマホ全盛の時代になると、今度は話が違ってきたんや。パソコン時代は結構皆電源に繋いで操作するからスカイプがパソコンのCPUを多少使って通信しても問題なかったものが、スマホは電源を消費することは避けないといかん訳だから、サーバー(クラウドとか言うよね)側で必要な処理をするクラウドベースの通信アプリの方がよくなってしまった。

 

しかもViber、Whatsapp、Kakako、LINEはスマホの電話番号と紐づけてアカウントを管理しているので、スマホの電話帳に入っている友人と自動的に繋がれる事がスカイプと比較してすごく便利だった。スカイプはあくまで「Skype ID」を教えあって繋がらないといけなかったからね。

 

そんな訳で最強で革命的だった「P2P通信技術」も一瞬で過去の遺産になるんだなって事を身を以て体験すると言う貴重な機会だったと思う!

 

色々勉強したなぁほんま。そして、テクノロジーの会社ってこれだけアメリカ一強の時代なのに、俺はヨーロッパの会社とは本当に縁がある。ダンスもボクシングも発祥はヨーロッパ!嬉しい事や。

 

では機会があれば後編を書きたいと思います。

チャオ!